リスカ
2ヶ月前
市主催の妊婦のためのアロマセラピーで彼女と出会った
夫婦での参加
とてもやさしそうなご主人だった
講義が終わり
二人で組んでのマッサージになると
彼女はそっと腕の傷をみせてくれた
いく筋もの赤い引っかいたような傷は
一瞬なにかわからなかった
はっとして
「これ薄くしようか」と聞くと
こっくりとうなずいた
すぐに用意しておいた妊婦さん用のアロマオイルを腕につけ
魔法の呪文と祈る気持ちをこめてさすってみる
赤みは見る見る薄れ
逆に彼女の顔色はうっすらとピンクがかって見えた
手を止め一度彼女にみてもらうと
信じられないと大喜び
もう消えないものとあきらめていたという
母になり
子供にどう説明していいのか後悔していたことだったのだ
もう一度させてもらえばもっと目立たなくなるから
一度店に遊びにおいでと伝えておいたら
つわりもようやく治まったと遊びに来てくれた
2ヶ月ぶりに見る彼女は幸せに満ち溢れている感じだった
新たな夢を見つけたという
ハーブティーを飲みながら
傷痕にオイルをつけマッサージ
傷はかなり目立たなくなり喜んだ彼女は
「魔女さんを含め自分は人に恵まれている」と
過去を話し始めた
2時間にも及ぶ彼女の壮絶な人生の話に
大概の事には驚かない魔女も衝撃を受けた
寂しかった彼女を救ったのは
ご主人はじめ彼女の手を握って離さなかった人のおかげだという
「人を落とすのも人、人を救うのも人」と彼女は何度も言っていた
この若さで沢山のことを経験し
愛を学んできたのかと思うと複雑な心境になる
「またいつでも遊びにおいで」
「何度もマッサージすることでどんどん傷も消えていくから」
簡単には消えないであろう心の傷も一緒に消えていくことを願いつつ
彼女を送り出した
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